2015東日本スクリプス会

会期:2015年11月7日(土曜日)14:30 –

会場:TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター

会費:講演会8000円 懇親会2000円

今回は、3名の先生に ご公演頂きます。

 李 賢喆 先生(Cravatt研留学、順天堂大学)

『ケミカルバイオロジー的手法を用いた脂質代謝酵素の機能解析』

長野 正展 様(Barbas研留学、東京大学)

『化学を基盤とした経口ワクチンへのアプローチ』

柴山 耕太郎 様(Boger研留学、日本曹達株式会社)

『超原子価ヨウ素を用いたカップリング反応によるvinblastine類縁体の合成法の開発』

また、講演後にパネルディスカッションを計画しております。

 

第16回東日本スクリプス会幹事

大坪 伸将(協和発酵キリン株式会社)

五東 弘昭(横浜国立大学)

Baran研究室に留学してー相原佳典

2014年8月から12月までの約4か月間、スクリプス研究所のPhil S. Baran教授の研究室での研究留学の機会を頂いた。

2014年の4月に留学を快諾する返事をPhil S. Baran教授から頂いた際は、しばらく興奮がおさまらなかった。それもそのはず、Baran教授は多数の複雑な天然有機化合物を斬新な経路かつ短工程で合成を達成しているだけでなく、新しい合成手法の開発も行っている世界的に有名な研究者だ。さらに、Baran研からは毎年のように科学雑誌の最高峰であるNature, Scienceに論文が投稿されている。また、スクリプス研究所は化学をかじっている人では誰もが一度は耳にしたことがあるほど、世界トップクラスの化学者が集まる研究所である。特に私の研究分野で有名なJin-Quan Yu教授も在籍しており、実際に留学に行き、論文の写真で見慣れていた顔をみつけた際は興奮した。

このような憧れの場所で研究ができ、世界一と言ってもいい環境で自分の力を試すことができることから喜びが収まらなかった。

 

カリフォルニア州サンディエゴはメキシコとの国境沿いに位置しており、一年中温暖で夏の間は雲一つない快晴の日が続く。私は自転車で通学していたが、雨具を使ったことがない。それほど降水量が少なく、とても過ごしやすい気候が魅力の一つだ。

スクリプス研究所があるサンディエゴ郊外のラホヤは海岸と丘陵のあるリゾート地として有名でビーチやゴルフ場があり、日本では研究室に一日中こもって実験をして過ごしていた私にとって夢のような場所だった。

 

サンディエゴに着いた翌日にPhilとのミーティングを行い、

「天然有機化合物の合成か反応開発どっちがしたいか?」

と聞かれた。日本で所属している研究室では主に遷移金属触媒を用いた反応開発を行っており、天然有機化合物の合成に関する知識はほとんど皆無だった。しかし、せっかくBaran研で研究を行うなら天然有機物化合物の合成をしたいと考えていたため、「天然有機化合物の合成をしたい」と即答した。

ディスカッションが終わると早速アメリカでの実験を開始した。胸にThe Scripps Research Instituteと刺繍のある青色の白衣に袖を通した時に、自分がBaran研の一員になれたと実感したことを今でもはっきりと覚えている。

Baran研は人数が多く、当時ポスドクと学生合わせて約40人もいる大きな研究グループであった。化学系のメインの建物は開放的なつくりであり、Baran研の部屋は4階にあるため、毎日夕方になると太平洋に沈む夕日がきれいに見え、一日の実験の疲れを癒してくれた。

天然有機化合物の実験は、私が日本でやってきた反応開発実験とは大違いであり、慣れるまで大変苦労した。なかでも反応を検討する際は極めて小さいスケール(0.5mg)で行っており、溶媒が低純度であったことも関係して、精製後においても溶媒由来の不純物が多く入るなど苦労する点も多々あった。

実験以外にもBaran研では、著名な教授の講演や、毎週土曜日に最新の論文紹介・反応機構のクイズを含めたセミナーや、目的の化合物の合成ルートをグループに分かれて考え・発表するブートキャンプなどがあり勉強にも力を入れていた。

 

一緒に実験を行った学生のYiyangには刺激を受けた。彼はシンガポール出身で、イギリスのケンブリッジ大学を卒業し、その間3か月東京大学へ留学している。さらに、いい意味で大変おしゃべり好き、かつ反応に関する知識も豊富であった。そんな彼の化学に対する「純粋な好奇心」が今でも一番心に残っている。

彼に目的の反応がうまくいったことを伝えると、目を輝かせながらディスカッションが始まった。2人で多くのアイディアを出し合い、これを試そう、あれを試そうなど毎日のように話し合った。このディスカッションを通して、化学の面白さを再確認することができた。

 

Baran教授と筆者
Baran教授と筆者

Baran研での研究に関して、一番印象に残っていることは、化学系では珍しく多くの会社と積極的に共同研究を行っているところだ。詳細は(Acc. Chem. Res., Article ASAP DOI: 10.1021/ar500424a)の論文を参考にしてほしい。

実際に私が行っていたプロジェクトもデンマークの製薬会社のLEO ファーマとの共同研究であった。実際には、月に2回程度LEO ファーマの方を含めてテレビ電話でディスカッションしたり、合成した化合物をLEO ファーマに送り生物活性を確認してもらったりしていた。

また、スクリプス研究所では研究所内のグループ間での共同研究も盛んであり、共同研究以外の交流に関しても、週に2度生物系・化学系の論文紹介をしながらランチをする会を学生が主催するなど、日本に比べて多く感じた。

 

研究をするには4ヶ月という期間は極めて短く、予想していた以上に研究は進まなかった。しかし、この留学を通して得られた体験や友人は日本では得られないものであり、今後の人生においても重要なものになると確信している。

最後にこのような機会を与えてくださった茶谷直人教授、留学に関して色々相談にのっていただいた鳶巣守准教授に厚く御礼を申し上げます。そして私の留学を快諾していただいたPhil S. Baran教授にこの場を借りて心から感謝申し上げます。

Blackmond研とYu研に留学して| 瀧瀬瞭介

1月上旬、九州で学会に参加していた私のもとに伊丹教授から一通のメールが届く。見た瞬間、手の震えが止まらなかった。

「今頑張っている論文が通ったら、Scrippsに数ヶ月行きませんか?」

4ヶ月後の2014年5月18 日、その日は私の24歳の誕生日であり、またアメリカ、サンディエゴでの5ヶ月間の生活がスタートした日でもあった。

Scripps研究所はアメリカ西海岸に位置する世界最高峰の総合科学研究所であり、超一流科学者が集う、科学者なら一度は行ってみたい憧れの場所である。科学者の「メッカ」といえる場所でBlackmond研とYu研の二つの研究室を体験できたことはこれまでの化学人生の中で間違いなく最も幸運なことである。

 

Donna G. Blackmond教授は反応機構解明研究において世界的な権威である。私は彼女の研究室で、自らが開発したニッケル触媒を用いたカップリング反応の機構解析に取り組んだ。Scrippsロゴの入った青い白衣を身に纏い、英語による安全講習を受け、意気揚々と実験を始めようとしたが…それは叶わなかった。

「ん?グローブボックスがない…真空ラインは…壊れてる!?脱水溶媒もない…」

真空ラインはなんとかなったものの、グローブボックスと脱水溶媒はどうしようもない。そのことをラボメンバーに相談すると、「よし、グローブボックスはFokin研に借りに行こう、脱水溶媒は買うと時間がかかるから、はじめはBaran研のものを使おう。」と言われた。アメリカの自由な雰囲気を思い知った瞬間だった。幸いにもその後毎日Fokin研、Baran研に足を運んだため、両研究室の学生と非常に仲良くなれた。

Blackmond研究室では自分のカップリング反応と並行して、機構解析のスキルを学ぶことを目的としてポスドクと共同でYu研で開発された反応の機構解明研究も行った。その際ポスドクに言われたのは、Blackmond研には様々なバックグラウンドをもつ人が来るから、慣れるまで大変なことをみんな知っているし、日本人は英語が苦手なこともわかっている。でも気にせずどんなことでも聞いてくれ、ということだった。初めての反応機構解明研究で、しかも速い英語、知らない英単語が飛び交う中、今までにない不安を感じていた私をこの言葉は救ってくれた。つい先日、彼と二人三脚で行ったプロジェクトがもうすぐ一段落を迎えるというメールが届いた。彼には感謝してもしきれない。

一方自分が持ち込んだ反応はというと、なかなかうまくいかなかった。Donna曰く、反応条件が厳しすぎて機構解明は少し難しいかもしれない、ということらしい。残念ながら良い結果を残すことはできなかったが、得られたものは数えきれなかった。Donnaだけでなく、在籍するすべてのメンバーがkineticsに関して多くの知識をもっており、親身になって教えてくれた。彼らが教えてくれた知識や手法は、日本での研究で存分に活かしていこうと思う。

Donnaと筆者
Donnaと筆者

 

3ヶ月間Blackmond研で研究を行った後は、Yu研に移った。Jin-Quan Yu教授といえば、有機金属反応に携わる人で知らない人はいない化学界のスーパーエースである。(ちなみに私が滞在した年の1年間にNature、Science合わせて4報出している。)伊丹教授の大親友であり、私の滞在を快く引き受けてくださった。Yu教授に挨拶をしに行き、研究についてディスカッションをしたのち、Jian Heという中国人学生の下について反応開発研究の手伝いをすることに決まった。

 

Scripps研究所の中で、Yu研は異質な空間と言える。基本的に多くの研究室は夜9時になるとほとんど人がいなくなる。しかしながらYu研は夜11時をまわるとようやく人が帰り出すのである。そのアクテビティの高さはJinも同様で、夕飯に帰ったあと夜9時にまた顔を出す。土日は休みのはずだが必ず研究室にいた。有機合成、反応開発に飢えていた私は、朝9時半から夜2時、土日休みもほぼ無しの生活を続けた。Blackmond研での生活とはうって変わったものとなったが、ここでの研究も大変充実したものとなった。

 

Scripps研究所の学生は天才が多い。Jianも間違いなくそのうちの一人だろう。Yu研でJinと対等に話す唯一の人物であり、Jinから最も頼られている存在でもあった。私はメインのプロジェクトを進めつつ、彼が提案したアイディアを元に、数種類の反応開発を行った。幸運なことに、こんな反応はどうだろう?と私が言った反応を試してみたところ、目的の化合物が収率10%程度で得られた。モノが得られたらこっちのものだ、と言わんばかりに、毎日夜遅くから始まるディスカッションで彼からこれを試そう、あれを試そう、と数多くの仕事を与えられた。そのとき彼がニヤッとして言った一言が今でも忘れられない。

「Keep you busy.」

メインのプロジェクトでリガンド合成と基質合成を進めながら、同時にもう一方の反応開発を行うのは決して楽なことではなかった

が、Jianと行った2ヶ月間の研究は非常に楽しかった。帰国日の前日、必死にカラムで精製したリガンドを遅くなってごめんと言って渡した時、「今までありがとう、Ryoと研究できて楽しかったし、とても助かった。あとの仕事は任せろ。」と言ってくれた時は本当に嬉しかった。そしてその夜、JinがJianと私をJinのお気に入りの中華料理屋に連れて行ってくれた。忘れられない1日である。

5ヶ月間の留学はあっという間の出来事だったが、この留学を通して得られたことや、友人は間違いなく私にとって生涯を通して最高の宝物になるだろう。最後にこのような機会を与えてくださった伊丹健一郎教授、留学に関して多くのご助言をくださった山口潤一郎准教授に厚く御礼を申し上げます。そして私の留学を快諾していただいたDonna G. Blackmond教授、Jin-Quan Yu教授にこの場を借りて心から感謝申し上げます。

JinとJianと筆者
JinとJianと筆者

第18回 スクリプス・バイオメディカルフォーラム

開催日時:2014年11月22日(土曜日)13:30より

開催場所:阪急ターミナルスクエア(阪急ターミナルビル 1階)

参加費:4,000円 懇親会費:6,000円

【プログラム】(敬称略)

13:00       開場 受付開始

13:30       開会あいさつ 藤井 郁雄(大阪府立大学大学院)

講演

13:40       原田 明(大阪大学大学院理学研究科)

「高分子認識による超分子化、機能化」

座長:藤井 郁雄(大阪府立大学大学院)

 

14:35       重永 章(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(薬学系)・科学          技術振興機構)

「Peptide/Protein-based Chemical Biologyのための基盤技術の開発」

座長:佐々木 義一

(シオノギ製薬医薬研究センター創薬疾患研究所)

 

15:30       休憩

 

15:50       鈴木 孝禎(京都府立医科大学大学院医学研究科)

「エピジェネティクスのケミカルコントロール」

座長:浦 康之(奈良女子大学理学部化学科)

 

16:45       近藤 裕郷(塩野義製薬)

「オープンイノベーションとグローバリゼーションの明日を考える」

座長:町谷 幸三(日本農薬株式会社)

 

17:40       閉会あいさつ 古矢 修一(岡山大学教育研究プログラム戦略本部)

18:00       懇親会(20:00 終了予定)

20- 22:30頃 2次会:「カーナバル」(丸ビル7F 会費3,000円程度)

 

世話人

池田 昇司(バクスター株式会社)

小野田 晃(大阪大学大学工学研究科)

当日の写真はこちら(要パスワード)

2014東日本スクリプス会

日時: 11月8日(土) 講演会 14:30~

懇親会 18:00~

二次会 21:00~

場所: 五反田ゆうぽうと 7階『福寿(ふくじゅ)』  (講演会)

8階『サロン・ド・ジョワ』(懇親会)

会費: 1万円前後

今回は以下の3名の先生方にご講演いただきます。

藤原 佑太 先生「スルフィン酸塩を用いた芳香族複素環のC-Hアルキル化」(留学研究室 Baran研、Meiji Seika ファルマ)

井村 知弘 先生「バイオ・化学ベースのペプチド型界面活性剤の機能利用 ~環状ペプチドサーファクチンの新しい展開~」(留学研究室 Ghadiri研、産業技術総合研究所)

戸田 成洋 先生「Chemically Programmed Antibody」(留学研究室 Barbas研、第一三共株式会社)

また、東日本スクリプス会会長である上野 裕明 先生(田辺三菱製薬株式会社)を座長としたパネルディスカッションを計画しております。

以上、よろしくお願い致します。

第15回東日本スクリプス会 幹事

中村 毅 (第一三共株式会社)

正木 慶昭(東京工業大学) 

第17回 スクリプス・バイオメディカルフォーラム

開催日時:2013年11月30日(土曜日)13:30より

開催場所:新大阪ワシントンホテルプラザ

参加費:5,000円 懇親会費:6,000円

 

【プログラム】(敬称略)

13:00  開場 受付開始

13:30  開会あいさつ 藤井 郁雄(大阪府立大学大学院)

講演

13:40  山中 正道(静岡大学大学院理学研究科)

「有機合成化学を基盤とした超分子集合体の開発」

座長:徳永 雄次(福井大学大学院工学研究科)

14:35  佐々木 義一(シオノギ製薬医薬研究センター創薬疾患研究所)

「Asymmetric Total Synthesis of Vindorosine, Vindoline, and

Key Vinblastine Analogues」

座長:石川 勇人(熊本大学大学院自然科学研究科)

15:30  休憩

15:50  小野田 晃(大阪大学大学院工学研究科)

「金属タンパク質エンジニアリング:

人工生体触媒とバイオマテリアルへの展開」

座長:山口 潤一郎(名古屋大学大学院理学研究科)

16:45  佐藤 匠徳(奈良先端科学技術大学院大学)

「細胞内代謝調節を自在に操ることで細胞の生死をデザインする:

ヒト疾患治療への応用を目指して」

座長:古矢 修一(岡山大学教育研究プログラム戦略本部)

17:40  閉会あいさつ 近藤 裕郷(シオノギ製薬)

18:00  懇親会(20:00 終了予定)

世話人

大井 貴史(名古屋大学大学院)

黒田 久也(Y.K.エンタープライズ株式会社)

2013年 東日本スクリプス会

会期:2013 年12 月7 日(土)14:30~開会(14:00 より受付)、17:10~懇親会

会場:ゆうぽうと五反田 6 階『紅梅の間』(講演会)

6 階『花梨の間』(懇親会)

最寄駅: 東急池上線「大崎広小路駅」徒歩1 分

JR 「五反田駅」徒歩5 分

会費:講演会費:3,000 円、懇親会費:7,000 円

講演会プログラム(敬称略)

14:30–14:40

開会の辞

鈴木 敏夫 (新潟大学)

14:40–15:20

野村 渉

(東京医科歯科大学)

「ジンクフィンガーからゲノム編集ツールへの展開」

座長

杉山 雅一(味の素(株) )

15:20–15:25

休憩

15:25–16:05

福地 圭介

(第一三共株式会社)

「ドイツバイオテックU3

Pharma での研究生活で学んだコミュニケーションスタイル」

座長

安藤 吉勇(東京工業大学)

16:05–16:20

休憩

16:20–17:00

廣瀬 友靖

(北里大学)

「天然物を基盤としたin situ click chemistry」

座長

細川 誠二郎(早稲田大学)

17:10–19:40

懇親会

ゆうぽうと五反田

6 階『花梨の間』

20:00– 二次会

会場:『和桜ひとひら 五反田店

第14回東日本スクリプス会 幹事
安藤 吉勇(東京工業大学大学院)   
上原 久俊(三菱化学科学技術研究センター)

日本スクリプス会