2014年8月から12月までの約4か月間、スクリプス研究所のPhil S. Baran教授の研究室での研究留学の機会を頂いた。
2014年の4月に留学を快諾する返事をPhil S. Baran教授から頂いた際は、しばらく興奮がおさまらなかった。それもそのはず、Baran教授は多数の複雑な天然有機化合物を斬新な経路かつ短工程で合成を達成しているだけでなく、新しい合成手法の開発も行っている世界的に有名な研究者だ。さらに、Baran研からは毎年のように科学雑誌の最高峰であるNature, Scienceに論文が投稿されている。また、スクリプス研究所は化学をかじっている人では誰もが一度は耳にしたことがあるほど、世界トップクラスの化学者が集まる研究所である。特に私の研究分野で有名なJin-Quan Yu教授も在籍しており、実際に留学に行き、論文の写真で見慣れていた顔をみつけた際は興奮した。
Donna G. Blackmond教授は反応機構解明研究において世界的な権威である。私は彼女の研究室で、自らが開発したニッケル触媒を用いたカップリング反応の機構解析に取り組んだ。Scrippsロゴの入った青い白衣を身に纏い、英語による安全講習を受け、意気揚々と実験を始めようとしたが…それは叶わなかった。
5ヶ月間の留学はあっという間の出来事だったが、この留学を通して得られたことや、友人は間違いなく私にとって生涯を通して最高の宝物になるだろう。最後にこのような機会を与えてくださった伊丹健一郎教授、留学に関して多くのご助言をくださった山口潤一郎准教授に厚く御礼を申し上げます。そして私の留学を快諾していただいたDonna G. Blackmond教授、Jin-Quan Yu教授にこの場を借りて心から感謝申し上げます。